チーズが好きすぎてチーズの資格を取ろうと思い、NPO法人チーズプロフェッショナル協会のチーズ検定に申し込みをしたことは以前の記事で紹介させていただきました。
「チーズ検定」を取得するためには試験に合格しないといけないため、チーズについての知識を一通り勉強しておかなければいけません。チーズの種類や名前だけでなく、歴史や作り方なども勉強するんです。
今回はチーズ検定で学ぶことができるチーズについての知識をご紹介させていただきます。
チーズ検定で学べること
チーズの歴史

チーズの歴史は古く、紀元前6500年から5500年、メソポタミア文明の頃にできたと考えられています。現在でいうとイラクのあたりです。
当時は動物(ヤギか羊)の胃袋で作った水筒にミルクを入れて持ち運んでいたそうです。アラビアの商人が暑い砂漠をラクダの背に揺られて旅をしていた際に、喉が渇いたので水筒のミルクを飲もうとしたところ、中に入れたミルクが白い塊と黄色い液体になっていました。その塊を食べてみたところ非常に美味しかったそうです。これがチーズの始まりと言われています。チーズが砂漠の上から始まったとは少し意外ですよね。
ヤギや羊のような動物の胃袋にはミルクを固める凝乳酵素という物質があり、さらに暑い砂漠の上でラクダに揺られたことにより攪拌作用も働き、ミルクがチーズになる前の段階である「カード」という固形分と「ホエイ」と呼ばれる液体に分離したと考えられます。
分離した固形分だけではチーズとは言えず、ここから液体成分であるホエイを抜いて塩を加えたり、天日で乾燥させて固めたりしてチーズとなり、さまざまな工夫がなされて保存食や携帯食として進化していきました。
他国との交流や侵攻によりチーズもイラク周辺からギリシャへ伝えられ、さらにイタリアを経由しヨーロッパ全土へ広まったと言われています。古代ローマ軍は兵士の食料として毎日20gのチーズと小麦粉を支給したと記録に残っているそうです。このチーズは今でもイタリアで作られている「ペコリーノ・ロマーノ」というチーズではないかと言われています。
アジアへはインドから東南アジアへ、またはモンゴルを経由して中国、日本へと伝わりました。日本へ乳製品が伝わったのは飛鳥時代、インドから持ち込まれた仏教の書物に乳製品についての記載があり、その後「蘇」というチーズのような食べ物が作られました。奈良時代や平安時代の貴族文化では薬のような役割として重宝されましたが、鎌倉時代以降の武士の時代になると歴史から消えてしまったとのことです。時代劇でチーズなんて見たことないですよね。再び日本にチーズが登場するのは明治時代になってからです。
チーズの成分と栄養

チーズができる課程で固形成分である「カード」と液体成分である「ホエイ」に分かれます。この時に炭水化物である「乳糖」はホエイとして排出されるため、チーズにはほとんど炭水化物は含まれていません。この乳糖は牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする原因ですので、牛乳でお腹の調子が悪くなる方でも、チーズは大丈夫です。
チーズを100g作るためにはその10倍のミルクが必要となります。タンパク質や脂質、カルシウムなどのミネラル、ビタミンは濃縮されてチーズに含まれるため、チーズは非常に栄養価が高くなっています。ただし、ビタミンCと食物線維は含まれません。
チーズは健康にもいいと言われており、たくさん含まれているカルシウムやタンパク質が骨粗鬆症の予防効果があるそうです。また、血糖値の上昇を抑える効果もあります。チーズに含まれているリン酸カルシウムなどは、虫歯の予防にも役立つそうです。
チーズの作り方

もちろんチーズの作り方も勉強します。
凝固(ミルクを固める)
チーズを作るためにはまずミルクを固めることから始まります。これを凝固と言います。凝固を行う方法は3つあります。
1つ目は酸凝固です。乳酸菌や酢、レモン汁でも固めることができます。ヨーグルトも同じ原理で作られますが、比較的柔らかいチーズを作るときに用いられます。
2つ目はレンネット凝固です。まだ草を食べ始めていない牛やヤギなどの乳飲み仔の第4の胃がら抽出した酵素を使って固める方法です。ミルクのタンパク質が脂質やカルシウムなどを取り込むことで、硬いチーズを作る時に使われます。最近では微生物由来のレンネットが多く使用されるようになりました。
3つ目は熱凝固です。文字通りミルクを加熱して固める方法です。イタリアのリコッタはこの方法で作られます。
カッティング(水分を除く)
凝固させたミルクはまだ水分を多く含んでいてヨーグルトのような状態です。ここからさらに水分を抜いてチーズを作ります。ミルクを凝固させると「カード」という塊になります。このカードを切っていくとホエイと言われる水分がどんどん抜けていきます。
モールディング(型詰め)
ホエイを適度に分離させて後、「モールド」と呼ばれる型に入れて成形します。このモールドに入れたあとに上から圧力をかけてさらに水分を取り除きチーズの形が出来上がります。
型出し
モールドで形を整えた後、チーズを取り出します。このあと熟成させますが、フレッシュチーズはこの段階で製品となります。
加塩、微生物の添加
チーズはだいたい少し塩気がある味になっていると思いますが、これは雑菌の増殖を防ぎ保存性を高め、チーズを美味しくするために不可欠な乳酸菌やカビが働きやすくさせる効果があります。もちろんチーズに風味をつける役割もありますし、チーズの水分をさらに抜く効果もあります。
白カビチーズは表面に白カビの胞子を吹き付けた後に熟成させます。青カビチーズは原料乳の中にあらかじめ青カビの胞子を入れてチーズを作ります。ウォッシュチーズは表面を塩水やお酒などで洗って湿らせると「リネンス菌」が繁殖し独特の風味が生まれます。
熟成
チーズは熟成させることにより美味しくなります。
熟成とは、チーズの中に含まれるタンパク質や脂質が微生物や酵素によってアミノ酸や脂肪酸などに変化し、独特の風味と味が生まれます。フランスなどヨーロッパにはチーズ専門の熟成士という職業もあり、熟成という工程はチーズにとって非常に大切な工程になります。
熟成の期間はチーズによってさまざまであり、カマンベールはだいたい21日間、ブルーチーズで有名なロックフォールは最低90日間、イタリアのパルミジャーノ・レッジャーノは最低12ヶ月間と長い時間熟成させるチーズもあります。
チーズの種類
チーズの種類はたくさんあり、実際にどれくらいあるか正確には分からないそうです。フランスでは1つの村ごとに違うチーズがあると言われるくらい、地域ごとに様々なチーズが作られています。
大きく分けると次の6つに分類されます。
フレッシュタイプ
ミルクを凝固させ熟成させずに食べるチーズです。フレッシュタイプのチーズは水分が多く軟らかいものが多いです。
モッツァレラチーズやクリームチーズ、マスカルポーネもフレッシュタイプに分類されます。
白カビタイプ
チーズの表面に白カビを繁殖させて熟成させるチーズです。白カビが作る酵素によってチーズのタンパク質や脂質が分解され、内部が軟らかくなり、風味も濃厚になります。
カマンベールやブリーなどが有名です。
青カビタイプ
チーズの内部に青カビを繁殖させて熟成させるチーズです。ブルーチーズとも呼ばれます。白カビと同様に青カビが作る酵素によってタンパク質や脂質が分解され熟成されます。独特の風味とピリッとした刺激があり、やや好き嫌いが分かれます。
ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトンは世界三大ブルーチーズと言われています。
ウォッシュタイプ
チーズの表面を塩水やアルコールで洗いながら熟成させるチーズです。リネンス菌という納豆菌の仲間が表面に繁殖しチーズを熟成させます。リネンス菌により強い臭いと粘り気のある膜を作りますが、内部はそれほど臭いは強くなくトロッとした軟らかいチーズになります。
エポワスやモン・ドールなどがあります。
シェーブルタイプ
ヤギのミルクから作られるチーズをシェーブルタイプと呼びます。ヤギのミルクで作るチーズはもろく崩れやすいため、小さな形のチーズが多いです。独特の味と風味があり、このチーズも好き嫌いが分かれます。
ヴァランセやクロタン・ド・シャヴィニョルがあります。
セミハード、ハードタイプ
やや硬めのチーズをセミハードタイプと言います。熟成期間は1ヶ月から6ヶ月程度のものが多く、しっとりとしていて穏やかな風味があります。
ハードタイプは熟成期間が長く、水分が少なく硬くしっかりとしたチーズになります。長期熟成によりアミノ酸などの旨味成分が作られるので、濃厚な味わいが特徴です。
パルミジャーノ・レッジャーノやミモレット、チェダーチーズが有名です。
世界のチーズ
各国の代表的なチーズも勉強しますが、たくさんあるのでそれぞれのチーズについてはまた別の機会にご紹介します。
世界各国のチーズを食べてみたいですが、たくさんありすぎてどのチーズからにするか悩みますね。
チーズを楽しむ
チーズの知識だけではなく、チーズを切るためのナイフ、チーズの切り方、盛り付けるためのカッティングボード、チーズにあう食材や保存方法など他にもいっぱい学ぶことができます。もちろんチーズを使った料理も少し紹介されています。
チーズは好きだけどもう少し踏み込んでチーズのことを勉強したいと思っている方にはチーズ検定はとてもオススメです。私もチーズ検定を受けて、これまで以上にチーズのことが好きになりましたし、まだまだ知らないことがたくさんあることに気付かされました。これからもっとたくさんのチーズを食べて、チーズについて勉強していきたいと思います。皆さんも一緒にチーズを楽しみましょう!
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